「佐藤 慶」という料理に逢いたくて私が通わせていただいてるお店は料理の味わいは勿論として、そこにいらっしゃる料理人に逢いたいという気持ちがあります。
佐藤 慶虎ノ門にある
「虎ノ門 虓」のシェフです。ホスピタリティ溢れる物腰の柔らかな方ですが、秘めたる情熱や信念は並大抵のものではなく、現代に生きる武士のよう。あまり調味料などは使わずに食材の旨味を最大限に引き出していく料理の数々は、ジャンルを超えた「佐藤慶という料理」にまで昇華させています。数ヶ月ぶりにまたここへ帰って来れました。
今夜の献立
ビーフコンソメ♡
外来種との交配を逃れて、江戸時代から続く日本古来種の岡山県産「蔓草牛」の大腿骨から抽出したコンソメ。素晴らしく美味しい!口当たりは極濃厚で芳醇な香りがブワッと広がります。そして後味は切れ味があり、口の中に膜を張る余韻が残ります。
赤茄子の揚げ物コレが茄子?にわかに信じがたい驚きのある味わい。表面は極上のパリパリ感、そして「茄子とは液体だったの?」と錯覚するほどのトロトロ加減で、素材の旨味と甘味が素晴らしい。
稚鮎の揚げ物かなり軽い仕上がりの揚げ具合で、たでの葉の仄かな苦味が後を引きます。
鰻巻き♡
海鰻を使った鰻巻きに帆立を煮出した出汁をかけて。
卵の包み込むようなコク、存在感のある鰻の力強さ、帆立出汁の優しい味わいがまさしく三位一体となって口の中に幸せをくれます。素晴らしく美味しい。
車海老フライ♡♡
愛媛県産の天然車海老をシンプルにフライにして、北海道噴火湾産毛蟹と京都の千鳥酢を合わせたタルタルソースと共に。
コレは究極の海老フライでしょう。ただ硬いだけの海老フライとは違い、海老のしなやかさを感じられる食感があり、甘味が素晴らしい。そして、コレをタルタルソースと呼んでいいのか分からないほどに、ほぼ毛蟹!千鳥酢の酸味が全体的に味を締めていて、長く余韻に浸れるひと皿。


新烏賊と赤座海老のビスク♡
熱々のパイ生地に包まれた中には、新烏賊と駿河湾産の赤座海老を活きたまま使ってビスクに仕立てたもの。先に新烏賊を食べたあとに焼き立ての新作のパンをビスクにつけていただきます。
パイ生地を突き破ると、海老の香りがぶわりと立ち込めて、味わう前から濃厚さが伝わります。火を通した新烏賊もサクサクと歯切れよく、実に美味しい。そして白眉なのは新作のパン。表面はバリっとして、中はもっちりとして素晴らしい。毎日でも食べたい!
トマトパスタ♡♡
「いつもので、すいません」と供されたのは、大阪府山﨑産のトマト・塩・水のみを使ったパスタ。メインの前の口直しだそうですが…トマトの酸味や香りが確りとあり、脳が震える美味しさ。コレも毎日食べたい!
蔓草牛♡
「蔓草牛」のウチヒラを大腿骨から抽出したコンソメの中で低温調理したもの。ソースは同じように大腿骨から抽出したフォンドヴォーと炭火焼きしたトウモロコシのソースを合わせた2種。付け合わせは、炭火焼きしたパプリカの甘い部分のマッシュ。
素晴らしい!肉が舌と一体化するかのようなとろける食感があり、ふわりとトウモロコシの甘い香りがする濃厚なソースが咀嚼の度に旨味が出るような「蔓草牛」を引き立てています。心に響く美味しさ。
喉黒御飯♡
炭火で焼き上げた喉黒と炊き立てのご飯を合わせて。
見た目はシンプルな仕立てですが…喉黒は長崎県産の最高品を使い、身と皮の間の皮下脂肪を柔らかくする為にマリネしてから焼き上げることで、クドくなりがちな喉黒に仄かな酸味を与えてさらりと食べることができます。
カボチャのモンブラン構成はカステラ・小豆・パイ生地・カボチャ。モンブランマシンで絞りたてを供されると砕いたパイ生地の甘い香りが印象的で、確りとした小豆の甘味をキレのあるカボチャの甘味が包み込むよう。
カヌレ♡
カヌレ専門店でも買うことのできるあのカヌレ。お土産でいただくことで、余韻に浸れます。

店内の厨房や折敷がちょっと変わっていましたが、料理は変わらずに心に響く美味しさ。食材に対して真摯に向き合う佐藤さんの姿勢に応えるかのように旨味を120%引き出した食材たちは、軽やかな酸味と出会うことで更なる美味の高みへと昇華されていると思います。今回の1番のお気に入りの『車海老フライ』も毛蟹のタルタルソースに使っている千鳥酢が実にいい仕事をしており、『喉黒ご飯』においても酸味が味をグッと引き締めており、実に酸味の使い方が特徴的で素晴らしい。
一年を通して限られた日数の中で、佐藤さんの料理に出逢えることは何と嬉しいことでしょう。またお逢いできるの楽しみにしてます。

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